poponの書棚

言葉でみんなが幸せに、そしてポジティブになれたらいいね。そんな思いを書き込んでいます。

ナウエの物語 001-002

No.001

 

2020年2月25日 その町は、薄い雲に朝の陽光を乗せていた。

 

コウとケイは、スマホゲームに導かれて町を歩き回っていた。

 

 コウは13才。学校に行っていれば中1だが、コウは小学3年から学校には行っていない。人見知りで人と話すことが苦手なため、外出も極力しないようにしている。ただ、幼馴染のケイといるときは不思議と活動的になる。

 

 ケイは15才。4月に高校生になる。バドミントンに夢中で、生徒会役員もした行動派だ。

コウとは月に1~2回しか会わないが、一番リラックスできる友達だ。

 

 気付いたら二人は、近所の井上神社まで来ていた。井上神社は、二人が住んでいる町の氏神様だ。正月以外は人影はまばらで、わずかな枯葉をつけた木々だけが静かに二人を包んでいた。

 

 「コウ、あっちにすごいアイテムがあるみたいだぜ。行ってみよう。」 ケイは鳥居を抜けた脇の小道を進んで行こうとしていた。コウは気が進まなかった。それは、その小道の先で小さい頃に怖い思いをしたからだった。

 

 コウが5才の時、家族でお参りに来たことがあった。コウは、木の生い茂る小道を夢中で走り回っていた。ふと、小道の横の高台を見上げると、石造りの高い塔が見えた。その後ろに見えた青空は、今も覚えている。ぼんやりその塔を眺めていると、瞬きした瞬間に大きな男の人が現れていた。その右手には大きな刀が握られ、もう一方の手はコウを捕まえるかのようにこちらに大きく伸ばされていた。コウは大きな声で泣きながら、母のもとへ走っていた。

 

 

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popon

 

No.002

 

コウは恐る恐るケイの後をついていった。あの日見た塔が、枯れ草の中遠く静かに佇んでいる。

 

「ケイちゃん、そんなとこよりもコンビニでチキンでも買おうや。腹減った。」

「後でな。もうちょいでアイテムゲットだぜ。」ケイは、スマホを見たまま進んで行く。コウは仕方なく、ケイの後をついていった。昔見た石造りの塔がケイの背中越しに近づいてくる。

 

 苔むした石の台座の上に、灰色の細長い塔が見えてきた。近くで見ると、塔というようなものではなく、ただの細長い石の柱のようだ。「小さかったから、あんなふうに見えたのかな?」石柱は手のひらを広げたほどの大きさ、20センチくらいで、高さは台座を合わせても3メートルほどだった。表面は何かが彫られているようだが、わからない。

 

 塔の周りは、6畳くらいかコウの部屋と変わらない広さだ。少し離れたところに赤いつぼみをつけた木がある。コウよりはだいぶ低く150センチくらいか、枝にはたくさんの棘がついている。バラのようだ。「こんなとこだったんか、たいしたことなかった。」コウは、一人つぶやいていた。

 

「ここや、ここ。ここにアイテムが埋まってるみたいやで。」ケイはスマホをコウに見せた。スマホには、ちょうどバラの木のところに祠が現れていた。

 

 ケイは、スマホを操作して祠の中へ入っていった。しばらく進むと地面にわずかな光が現れた。ケイはそこを掘っていった。

「やった。ゲットしたぞ。コウも取れたか?」

「うん。」コウはスマホの画面を見ていた。今まで取ったことのないアイテムだった。画面には『虹色の雫』と書かれている。効果は『?』とあった。

 

「任務完了。コウ、チキン買いに行くか。」ケイが歩き出そうとしたとき、「痛っ。」ケイのズボンにバラの枝が絡みついていた。

「えっ、最悪こんなに枝が絡んでる。コウ、ちょっと後ろの枝取ってや。」

「オッケー。」コウは、ケイに絡みついた枝を恐る恐るはがしていった。

「痛っ。」

「なんや、コウも棘刺さったんか。どんくさいなぁ。」

「うっさいな。取っちゃってんやろ。ほら、終わったで。」

 

 「よし、行こうぜ。」ケイがコウの肩を組んで歩き出そうとした時、景色が暗転した。

to be continued